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お茶漬け観劇記録

色んなお芝居やイベントに首を突っ込んだりしてます。覚えておきたいこと、忘れたくないことをとりとめもなく置いておく場所。

加藤健一事務所 vol.98 「誰も喋ってはならぬ!~Une Heure de Tranquillit'e by Florian Zeller~」 観劇

観劇記録

加藤健一事務所さんの公演「誰も喋ってはならぬ!」を本多劇場にて観劇してきました。

 

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基本公演情報

加藤健一事務所 vol.98 「誰も喋ってはならぬ!~Une Heure de Tranquillit'e by Florian Zeller~」

 

公演期間:11/23~12/7 下北沢本多劇場

作:フロリアン・ゼレール
訳:中村まり
演出:堤泰之

 

cast

加藤健
島田歌穂
天宮良
藤忍
中村龍介
大久保鷹
・・・
渡辺徹

 

あらすじ-----------------

フランスのとあるアパルトマンの一室。
ある日、長年探し求めていた貴重なレコードを遂に手に入れたミッシェルは、大興奮のうちに帰宅する。
念願のレコードを堪能するという夢にまでみた一時に胸を弾ませ、早速ステレオのプレイボタンに指を掛けるミッシェルだったが、こんな時に限って次から次へと邪魔が入る。

深刻な面持ちで「話があるの。」と詰め寄る妻のナタリーを何とかなだめすかし、再び腰を落ち着けようとするが、今度は工事に来ていた配管工のレオが、水漏れしてしまったと大騒ぎ。
さらに離れて暮らす息子のセバスチャンは、妻に呼ばれて帰って来るなり常軌を逸した発言を繰り返し、水が漏れてきたとやって来た階下の住人パヴェルは、空気を読まずに居座る始末。
ついには愛人のエルザまでもが「大事な話がある!」と押しかけて来る。

よりによってどうしてこんな時に?? 僕は今それどころじゃないんだっ!!

やがて親友のピエールが現れ、事態は修羅場へと転じる!?
果してミッシェルに待ち受けていた結末とは・・・??

引用元:加藤健一事務所公式サイト「誰も喋ってはならぬ!」STORYより

 

というわけで観てきました誰も喋ってはならぬ!

フランスの人気劇作家の方の作品、ということで日本人の感性にどのように刺さるのかなぁ~という期待と少しの不安があったのですが、素晴らしく面白かったです。

ネタバレ配慮ないのでまだの方はお気をつけください。

 

お話

ユーモアのあるブラックコメディ。

悲劇の上に成り立つ喜劇、としきりに言われていたのですがまさにそれでした。

レコードを収集するのが趣味なミッシェルが、蚤の市で見つけた探し続けていた幻のレコード。

それを聞くために意気揚々と家に帰ったところで、巻き起こる悲劇の連続。

妻の過去の不倫にはじまり、才能のないボンクラ息子はどうしようもなく、改装を頼んでいたポーランド人はポルトガル人で工事は失敗、階下の住人は工事の失敗による水漏れで頻繁に訪ねてくるし愛人は妻に真実を伝えようとしに来るし、果ては妻の不倫相手はミッシェルの親友だった上に息子は不倫相手の子供かもしれない!?

なんて、ともすればシリアスな展開にもできそうな悲劇の連続。

その悲劇を絶妙な間合いとタイミングで喜劇に変えていくのが本当に緻密で観ていて面白かったです。

「他人の不幸は蜜の味」とはよく言ったものですが、あり得なさそう、だけど一つ一つの事案はあり得そうなリアリティとユーモアの絶妙な塩梅が心地よいお芝居でした。

全体のスピードが凄く早いわけでもないのですが、すごくテンポが良くて笑いどころ、落とし所がちゃんと分かるのも見ててなんだか安心感があります。

 

ミッシェルの悲劇

このお話のキモとなるミッシェルに降りかかる悲劇。

前提としてミッシェルは妻の親友エルザと不倫中。

それはもう半年以上続いていて、エルザは罪の意識から妻ナタリーに本当のことを伝えようとしていて…。

そんな中妻のナタリーは、精神科医の先生からの助言で20年以上前にしてしまったたった2週間の過ちを告白しようとする。

のだけれど、なかなか言えない。

でもミッシェルは妻の話を聞いてあげたい気持ち半分、手に入れたレコードを聞きたい気持ち半分で上の空。

微妙に噛み合わない、から回っている二人の関係がくすりと笑わせます。

個人的に一番おもしろかったのが、ナタリーの不倫相手が自分の親友でもあるピエールだったという所で、それまで(自分も不倫をしているしレコードを聞きたいしそもそも不倫は20年以上も前だったから)全然彼女の過ちに対して興味を示さなかったのに、初めて「ピエール!?ピエールと!?」と狼狽し妻を責めるミッシェル。

見事な掌返しと自分を棚に上げた発言が面白すぎて笑わせていただきました(笑)

それからエルザがナタリーに真実を告げようとした時に、動揺したミッシェルが何度も遮ろうとするもうまくいかないシーン。

結局エルザはナタリーに「不倫しているの」というところまでしか伝えられないのですが、ミッシェルはそのシーンをちょうど見ておらず、泣き出すナタリーにエルザが本当のことをいったのだと勘違い。

エルザの言ったことは嘘だ!この女はキチガイなんだ!とまくし立てるもナタリーが泣いているのは全然別件だし、エルザは見当違いな所で罵倒されてもう場はごちゃごちゃに。

噛み合わない会話とテンポが良くてこのシーンもめちゃくちゃ笑いました。

レコードのタイトル「Me Myself and I」まさに自己中心的な人達のお話って感じなのかもしれませんね。

 

全体的に見ていて思ったのは、本当に舞台の上に海外ドラマのホームコメディが繰り広げられてるっていう印象が強いなということで。

演劇にある大きな動きや大げさな展開はもちろんなんですが、それがより自然というか…テレビドラマを見ている気分にさせる不思議な感覚でした。

自分が普段見ている若手が多く舞台に上がるお芝居だと、こういった感覚は感じたことがなかったので逆に新鮮で楽しかったです。

 

アクの強すぎる登場人物

ベテランの皆様がさすがすぎて…私が今まで見ていた舞台のいろんなものを覆された感じがしました(笑)

渡辺徹さん演じるパヴェルの空気の読めなさがとにっっっっっっっかく面白くてめちゃくちゃ笑いました…。

シリアスになりかけたシーンでそっとパヴェルが発する一言一言が、一気に笑いになっていて、空気を作るすごく重要なキャラクターだなぁと思います。

妻ナタリー役の島田歌穂さんはミッシェルの次くらいに出番の多いキャラクターかな?

過去の過ちを語ろうとするも、やめる、語ろうとする、やめる、というめんどくさ~~~い感じを繰り出してくるのにくどくなりすぎなくて素敵。

アクが強すぎるキャラクターばかりなのに、全員が集合してもごちゃごちゃしすぎて理解できないっていう風にならないのもすごいなぁと。

私の理解力の低さもあるんですが、たくさんのキャラクターが一気に出過ぎると視覚から入ってくる情報が多すぎて混乱してしまうことが結構あって…。

でも今回はそういったこともなく、会話劇らしいセリフもしっかりと入ってきたので良かったです(*^_^*)

 

ミッシェルとセバスチャンの話

ミッシェルと息子セバスチャン。

この二人の関係性にまさかグっと引き込まれることになるとは思ってもいませんでした…。

 

レコードを集めるのが趣味のミッシェル。

その息子のセバスチャンはアングラロックバンドのギタリスト(かな?)。

夜な夜な穴蔵のような場所に住んで、生きたままネズミを食べるパフォーマンスなんてしてしまう…。

正直29にもなって才能もないし、理解も出来ない音楽をやっている。

そんな息子に対してミッシェルは最初、自分とタイプは違えど音楽が好きなことには変わりないし…ライブもよかっただろうと妻ナタリーをなだめる。

の、だけれど。

妻ナタリーが息子は不倫相手の親友ピエールの子!と言うのがわかってからは怒涛の掌返し再び。

自分とセンスが違いすぎておかしいと思っていたんだと突然セバスチャンのやっている音楽を否定しだします。

 

そんな二人も微妙に噛み合わない会話から、最後は親子愛の話へ。

そもそもセバスチャンというキャラクターは曰く「不安定で内向的」。

けれど出てきたビジュアルはゴリゴリのパンクファッションにどぎつい赤色のギターケースを持って腕にはいかつい入れ墨をいれたロッカー。

ファッカーズというアングラなロックバンドに所属していて、「セバスチャン」と呼ぶたびに自分は「ファッキングラットだ!」と訂正させます。

最初はセバスチャンと呼んでいたミッシェルもナタリーも途中から面倒になってちゃんと呼んでいるのが面白かった…(笑)

到底内向的に見えないセバスチャンですが、自分の部屋が改装によって無くなるとわかった時の表情や、リビングに運び出されてきた家具を見たときの懐かしむような表情にその性格の片鱗を見たような気がしました。

 

ピエールが父親だとわかった上にピエールはまだナタリーを愛している、と分かったミッシェルは、もう3人で話をしろとばかりにその場を放置してしまいます。

けれどセバスチャンは母の「ピエールが父親」という言葉を理解しているのかいないのか、特に衝撃を受けた様子もなく平然としている。

ピエールがパパだよ、としきりに訴えるもうるせぇと一喝するだけで。

だからといって育ての父と実父との間で揺れるでもなく修羅場があるわけでもなく、すごくフラットな感じ。

 

どうしてだろうと見てると、ラスト自分のやっている音楽をミッシェルに直接糾弾されたセバスチャンが 突然泣き出すシーン。

それまで我関せずと言わんばかりにのらりくらりとしていたセバスチャンが、突然小さな子どものように。

パパはライブ良かったって言ってくれたじゃないか!と泣きじゃくるセバスチャンの姿は、ミッシェルが言っていたとおり「不安定で内向的な子供」そのものでした。

セバスチャンはピエールが父とわかったあと、パパとアピールを頻りにされてもピエールに「パパ」という言葉は向けなかった。

だからこそ、ここで言うパパという言葉が凄く重く感じられて。

セバスチャンにとっては実父だろうが育ての父だろうがなんだろうが、関係なかったのかなぁと…。

パパに褒めてもらえて嬉しかったんだろうな~って思うと可愛らしいです(笑)

 

しかし良い話だな~!って言うだけで終わらないのがまた面白い。

ちゃんと落としてくるポイントがあるのは徹底されてて最高でした~!

 

2回め観劇の際にセバスチャンの機微に注視して見ていたのですが、セバスチャンってほんと頭悪いんだろうなぁ!?って言うのが窺えたような。

本当の父親がピエール、だけど自分が思うパパは一人だけ。

言われたことをちゃんと理解しているのか?という言葉に対しては返事はしないものの、回りでドタバタと会話が起こっている間もセバスチャンは一人考え込む表情をしていました。

言われたことを飲み込もうと理解しようと頑張ってはいるものの、自分のママはナタリーでパパはミッシェル、っていうところから進めないのかなぁ…。

ミッシェルの浮気がバレてナタリーが家を飛び出していったあと、最終的にセバスチャンはママにランチは出来ないって伝えて、と見当違いのことを言い出すし。

知恵遅れと言っていたけれど本当にそこまで頭が回らない、ただただ素直な子供なんだろうな~って思いました(まぁ年は29でおっきいんだけど)

 

セットや小道具

まず入って思ったのがセットがめちゃくちゃ作り込まれてる!!っていうこと。

本当にアパルトマンの一室がしっかりと再現されていて、一番中央の壁にある大きなレコード収納棚がとても存在感がありました。

これが後々あんなことになるなんて…って感じですが(笑)

ドラマになっている方の映像をちらっと見たのですが、同じような作りになっていて素敵でした!

 

壁際の絵やチェストの上のオルゴールに花瓶。

上手側のローチェストの上にあるウイスキーや水差し、ソファにテーブル…本当に生活ができそうな感じ。

それから細かいなぁと思ったのが息子セバスチャンの家具。

改装中のあれこれでリビングに運び出されてきたセバスチャンの家具の中で、クローゼット?があったのですが、それにペタペタとシールが大量に貼ってあったのに笑いました。

自分の家のタンスにも同じようにシールが貼ってあります…冷蔵庫とかタンスとか棚とか子供って貼るよなぁ~!!って懐かしい感じが…(笑)

懐かしげにシールを触るセバスチャンにじんわりきました^-^

 

誰も喋っては…

タイトルの「誰も喋ってはならぬ」について。

レコードを聞きたいんだから皆黙っていてくれ!という意味合いかな~とあらすじを見たときから思っていたのですが、それに加えて「本当のことを喋るばかりが良いことではない」って言う戒めかな~って言うのも感じたかなぁ。個人的な解釈ですが!

このお話全員がウソや秘密を抱えている。

ミッシェルとエルザはお互いの浮気を、レオは出自を、ナタリーは子供の出生、ピエールは過去の親友の妻との浮気とナタリーへの思い、セバスチャンは父への気持ち、パヴェルは軽いけどウイスキーの下りとか。

ことパヴェルに関しては実況役に回る部分もあったので、いちいち本当のことを言わなくても良い!って言うのも感じたかな。(ソレがまた面白いんだけど)

セバスチャンは冒頭でパパからの留守電なんて聞いてないけど?って言った割に最後には留守電で良かったって言ってたじゃないか!って言ってるし小さなウソもいっぱい散りばめられてるかもしれないですね。とてもかわいかったです(主観)

ナタリーが精神科医の先生に焚き付けられなければ、エルザが突然暴露しようとしなければ、こんなことにはなってなかったかもしれない!と思うと本当のことを言うばかりが良いことではないのかもしれない?

でもレオやセバスチャンはウソや秘密を抱えたことでここまで拗れてしまって。

私は今回誰かに感情移入してみるってことはせずに「これはこう言うものなんだ」って気持ちで観ているのですが、どこかのキャラクターに感情移入して見るのも楽しそうです^-^

 

まとめ

普段、若手俳優さんが多くでる舞台ばかり観ていた私にとって、今回観た舞台はなんというか色んな感覚が変わる舞台でした。

緻密に練られてタイミングを調整した意味のある笑い。

話の流れを無視したアドリブや、大きなネタや動きで笑わせるというものではなく、会話の流れの中でおこる自然な笑いってコメディの真髄なんだろうなぁと思いました。

最後の大オチがなんというか本当に実際こんなことがあったら悲しいんだけど、客観的に観ていると面白くて「悲劇の上に成り立つ喜劇」を照明がおちるその瞬間まで楽しむことが出来てとても良かったです。

コメディって正直笑えないことが多くて…今回も大丈夫かなぁと思いつつ行ったのですが最後まで笑えて本当に楽しかった。

お芝居が楽しい、早くまた観たいって思えるのって本当に幸せなことだなと思います。

 

そして、そんなベテラン大先輩達の中で、初めての一番最年少の現場にいた龍くん。

今回、舞台の上にいた龍くんは、今まで私が観てきた中村龍介を踏まえた上で、自分の個性や出せる持ち味を活かして「バカ息子セバスチャン」を作り上げていて。

いつもの龍くんなんだけど、たしかにいつもと違うっていうのが凄い伝わってきて本当に素敵だった。

私はお芝居に関して素人で、細かいことはわからないことの方が多いのででかい口は叩けませんが…。

それでもたくさん観てきたお芝居の中で、今回は本当に最高で最良のお芝居でした。

まだまだ公演は続くけど頑張るのではなく、毎日ただひたすらに楽しくバカ息子を演じていってほしいです。

 

 

ちまちま間違ってたとことか(笑)書き足したいところとかを追加中。